動画配信に関して、一般的に使われる用語から最新の技術用語まで、分かり易く解説します。

英・数字

AAC (Advanced Audio Coding)
音声コーデック(圧縮方式)のひとつです。MP3よりも圧縮効率が高く、多くのサービスやデバイスで標準の音声フォーマットとしてサポートされています。AACの中でも拡張機能を使用するかどうかで、複数のプロファイルがあり、AAC-LCやAAC-Main、HE-AACなどがありますが、特別な要件が無い限り、基本機能だけが含まれるAAC-LCが一般的に使用されています。
AVOD (Advertising Video On Demand)
動画の最初や途中などに広告を入れ、スポンサーからの広告費を得ることで、ユーザーは無料で動画を視聴することができるVODのサービスモデルです。
CDN (Contents Delivery Network)
複数の拠点に分散するエッジサーバーにコンテンツの複製(キャッシュ)を配置し、中央のオリジンサーバーやネットワークにアクセスが集中しないようにするサービスのことです。動画配信では扱われるデータ量が非常に大きくなるため、ユーザーからの同時アクセスに対応するため、CDNを利用することが一般的になっています。
DRM (Digital Rights Management)
デジタル著作権管理のことです。動画配信においては、映像コンテンツの著作権を保護するため、視聴するユーザーやデバイス、視聴期限などにもとづいて再生を制御する技術です。DRMに対応した再生プレーヤは、暗号化されたコンテンツを再生するためのライセンスをライセンスサーバーから取得し、特殊な方式で復号キーを生成、復号しながら再生を行います。暗号化コンテンツとライセンスを別のデバイスにコピーしても、再生を行うことが出来ないような機構がDRMの特徴です。主なDRM技術として、Microsoft PlayReady、Google Widevine, Apple FairPlay Streamingなどがあり、各種デバイスやブラウザでサポートされています。
EME (Encrypted Media Extensions)
HTML5の仕様であり、ブラウザがDRMの機能を利用するために規定されたインターフェースです。主要ブラウザは何らかのDRMモジュールを実装しており、EMEを介してこれを利用することでDRMに対応したコンテンツをブラウザが復号することが可能になっています。EMEが実装される以前は、Adobe FlashやMicrosoft Silverlightなどのプラグインを使用して、DRMコンテンツの再生を行っていました。
FPS (FairPlay Streaming)
Apple社のDRM技術です。FairPlay Streamingで保護されたコンテンツは、専用のライセンスサーバーから取得したライセンスを使用して、Mac OS、iOS、tvOS(AppleTV)、Safariブラウザで再生することができます。iTunesでの動画配信に利用されており、独自のサービスで利用するためにはコンテンツ配信事業者がApple社からの認証を得て証明書を取得する必要があります。
HLS (HTTP Live Streaming)
Apple社が開発したストリーミング方式です。MPEG2-TS形式のメディアコンテナに格納され、数秒間隔で細分化された動画データファイルとそれらの再生順序などを定義するプレイリストファイル(.m3u8)によって構成されます。FairPlay StreamingによってDRMを掛けたり、AES128による簡易的な暗号化を施したストリーミング配信にも対応しています。
H.264
動画コーデック(圧縮方式)のひとつです。MPEG-4 AVCとも呼ばれる規格で、MPEG-2と比較して2倍以上の圧縮効率と様々なデバイスで再生可能であることから、標準的な規格となっています。プロファイルによって使用可能な圧縮方式と拡張機能が変わり、主なプロファイルにはBaseline、Main、Highがあります。また、レベルによって最大ビットレートや解像度が定められており、再生デバイス側に必要となる性能の目安を定義しています。
H.265
動画コーデック(圧縮方式)のひとつです。HEVCとも呼ばれる規格で、H.264と比較して約2倍の圧縮効率を実現できます。データ量を抑えることができるため、既存のネットワーク帯域で4Kなどの高解像度の動画配信を行うのに適しています。ただし、エンコードの処理量が莫大に増えるため、非常に長時間のエンコード時間を要することや再生側の負荷も高くなるため、専用のハードウェアやチップを搭載したデバイスが必要になります。
MP3
音声コーデック(圧縮方式)のひとつです。AACよりも古くからありMP3プレーヤの登場で広く普及しましたが、動画配信における音声では、より高音質で圧縮効率の高いAACが標準となっています。
MP4
映像や音声を格納するコンテナフォーマットのひとつです。MPEG-4規格の一部として、映像や音声データ、各種メタ情報をファイル内にどのように格納するかを規定しています。H.264やAACなどの対応したコーデックで圧縮されたデータが格納されます。
MPEG-4
ISO/IEC 14496で標準化されている動画や音声をデジタルデータとして扱うための非常に広範な規格です。狭義にはメディアコンテナであるMP4、動画コーデックであるH.264(AVC)、音声コーデックであるAACを含む規格のことをいう場合があります。
MPEG-DASH
標準規格となっているストリーミング方式のひとつです。任意のコーデックでエンコードされたコンテンツを格納することができ、複数のDRMに対応させることも可能です。PlayReadyとWidevineであれば、ひとつのデータで対応させることができ、ストレージの容量を抑えることができます。数秒間隔で細分化された動画データファイルとそれらの再生順序などを定義するマニフェストファイル(.mpd)によって構成されます。
MSE (Media Source Extensions)
HTML5の仕様であり、ブラウザに動画のストリームデータを渡して再生させるインターフェースです。このインターフェースを使用することで、JavaScriptで動画再生を行うプレーヤを実装することが出来るようになりました。
PlayReady
Microsoft社のDRM技術です。PlayReadyで保護されたコンテンツは、専用のライセンスサーバーから取得したライセンスを使用して、Windows OS、Edgeブラウザ、IEブラウザ、PlayReadyに対応したセットトップボックスや各種デバイスで再生することができます。ライセンスサーバーはMicrosoft社から認証された事業者から提供を受ける必要があります。
SmoothStreaming
Microsoft社が開発したストリーミング方式です。当時は複数プラットフォームに対応したSilverlightや各種デバイスが対応していたため、多く利用されていましたが、最新のブラウザではFlashやSilverlightなどのプラグインが利用できなくなったため、MPEG-DASHなどのHTML5での実現方式に移行が進んでいます。
SVOD (Subscription Video On Demand)
月額課金などの定額制のサブスクリプションで、ユーザーが多数の動画を視聴することができるVODのサービスモデルです。
TVOD (Transactional Video On Demand)
都度課金により一定のレンタル期間に動画を視聴することができるVODのサービスモデルです。作品の人気度やレンタル期間、画質によって価格が変わる場合があります。
VOD (Video On Demand)
視聴者が視聴したいときに視聴したい動画コンテンツを観ることができるサービスのことです。インターネットを使用することで、放送では実現できないオンデマンド型の映像サービスが実現可能になりました。課金方式によって大きく分けてTVODやSVOD、AVODがあります。
WebVTT (Web Video Text Tracks)
字幕などの時系列なテキスト表示に利用されるデータフォーマットです。トラックファイルと呼ばれるテキストファイル(.vtt)に表示タイミングとテキストを定義して、ブラウザやプレーヤーに読み込ませることができます。ルビや画像にも対応しており、表示タイミングに合わせた画像を定義することでシークバー上に表示するサムネイルに利用されることもあります。
Widevine
Google社のDRM技術です。Widevineで保護されたコンテンツは、専用のライセンスサーバーから取得したライセンスを使用して、Chromeブラウザ、Firefoxブラウザ、Android、AndroidTV、Chrome OSで再生することができます。ライセンスサーバーはGoogle社から認証された事業者から提供を受ける必要があります。

アダプティブビットレート
ストリーミング再生時のビットレートや解像度を視聴環境に応じて自動的に変更する仕組みです。実現するためには、事前にひとつの動画コンテンツに対して複数のビットレートの動画ファイルを用意する必要があります。MPGE-DASHやHLS等の主要なストリーミング方式では、複数ビットレートをまとめてアダプティブビットレート形式で配信することが可能です。プレーヤ側では再生時の通信環境や負荷状況に応じて、最適なビットレートに切換えながら再生を継続することができます。
エンコーディング
動画コンテンツを一定のルールに従って圧縮することをエンコーディングといいます。エンコードを行うソフトウェアやハードウェアのことを「エンコーダー」と呼びます。エンコーディングによりファイルサイズを大幅に圧縮することで、インターネットで配信することができるようになります。エンコーディングではフレームやブロック単位で前後のフレームとも比較しながら圧縮処理を行っていくため、CPUに掛かる負荷が高く、処理に時間が掛かります。
追っかけ再生
ライブストリーミング配信において、既に開始されている番組を先頭から再生することを「追っかけ再生」や「頭出し再生」といいます。番組の冒頭を見逃してしまったユーザーにとって便利な機能です。実現するためには、ライブ配信用のストリーミングとは別に追っかけ再生用のストリーミングファイルを番組毎に用意するのが一般的です。
オフライン再生
動画コンテンツファイルを事前にダウンロードしておき、ネットワーク接続が無い状態で再生することをいいます。ユーザーは視聴したいコンテンツをWi-Fi環境でダウンロードしておくことで、外出先でのパケット消費を抑えて視聴することができるため一定のニーズがあります。DRMによって保護されたコンテンツの場合は、完全なオフライン状態で再生するには事前にライセンスを取得しておく必要があります。
オリジン
CDNを利用した動画配信においては、負荷分散のためにキャッシュされたコンテンツに対して、オリジナルのコンテンツのことを「オリジンコンテンツ」や「オリジンファイル」と呼びます。また、それらを格納する場所を「オリジンサーバー」や「オリジンストレージ」と呼びます。

可変ビットレート
動画のエンコード時にシーンに応じてビットレートを可変にする方式のことです。画質を維持しながら、シーンに適した圧縮が効率的に行われるのがメリットです。一方で、ビットレートが変動するため、帯域制限の厳しい通信環境では再生が止まるなどのデメリットが考えられますが、実際には可変といっても上限ビットレートを設定することで、この問題を解消することができます。
解像度
動画のフレームを構成する縦横のピクセル数で表現され、画角ともいいます。720×480 のSD、1280×720 のHD、1920×1080 のフルHD(2K)、3840×2160 のUHD(4K)などがあります。低速回線での視聴向けや低解像度で十分な映像の場合は、SDよりも小さい 640×360 や 427×240 といった解像度を使用する場合もあります。
コーデック
エンコードやデコードの方式やそのプログラムのことを「コーデック」と呼びます。動画コーデックには、H.264やH.265などがあり、音声コーデックには、AACやMP3などがあります。
固定ビットレート
動画のエンコード時にビットレートを常に一定にする方式のことです。ネットワーク帯域に制限がある場合に適しており、ファイルサイズの予測ができるのがメリットです。一方で、データ量が少なくできる動きの少ないシーンでも、データ量が多く必要な動きの激しいシーンでも、一定のデータ量が割り当てられてしまうため、画質が一定でなくなるというデメリットがあります。
コンテナフォーマット
動画コンテンツを格納するファイルのフォーマットです。代表的なものとしてはMP4やMPEG2-TS、MOVなどがあります。このフォーマットに従って各種コーデックでエンコードされた映像や音声データ、メタデータが格納されます。
コンテンツプロバイダー
動画配信においてはデジタル化された映画やドラマ、アニメなどの動画コンテンツの権利を保有し、配信事業者に提供する事業者のことをいいます。

サンプリングレート
音声のアナログ波形を1秒あたり何回デジタル化するかを示す値で、単位はHzが一般に使われます。サンプリング周波数とも呼びます。一般的にCDなどの音楽の世界では44.1kHzが使用され、DVDや動画配信における音声では48KHzが使用されます。
ストリーミング
動画などの大容量コンテンツをインターネット上のサーバーから受信しながらクライアントで再生する方式のことです。全てのデータをダウンロードしてから再生する場合に比べて、再生開始までの時間が大幅に短くなり、再生後はクライアントにデータが残らないことが特徴です。現在主流となっているストリーミング方式(配信方式)としては、MPEG-DASH、HLS、SmoothStreaming、次世代の方式としてCMAFなどがあります。ストリーミング再生を行うには、各方式に対応したコンテンツファイルの準備とブラウザやプレーヤが必要になります。

同時視聴制限
ひとつのユーザーアカウントを使用して複数のデバイスでの同時視聴を制限することをいいます。同一のユーザーアカウントを不正に複数人で共有するなどし、動画コンテンツを視聴されることを防ぎます。動画配信事業者はコンテンツプロバイダーの権利を守るため、同時視聴制限を設ける場合があります。
トラック
映像および音声の独立した個々のメディアデータをトラックといいます。映像トラックと音声トラックがコンテナフォーマットに格納されることで動画コンテンツのファイルが構成されています。多言語など複数の音声トラックがひとつのコンテナフォーマットに格納されている場合をマルチトラックと呼びます。
トランスコーディング
動画ファイルの再エンコードを行わずにファイルフォーマットの変換や圧縮形式の変換を行うことです。再エンコードを伴わないため、画質の劣化がなく処理も高速に行われます。例えば、MPEG-2からMPEG-4への変換、MP4からMPEG-DASHへの変換をトランスコーディングと呼びます。

倍速再生
再生速度を変更して1.5倍や2倍などの高速で再生することをいいます。時間を節約して多くの番組や教育コンテンツなどを視聴する手段としてニーズがあります。実現方式としては、エンコードによって再生速度の変更した動画コンテンツを別に用意する方式と、共通の動画コンテンツを再生時にプレーヤ側で再生速度を変更する方式があります。プレーヤ側で再生速度を変更する方が柔軟で手軽ですが、ネットワーク帯域を多く消費し、デバイス側の負荷も高くなるため、映像や音声を高速かつ滑らかに再生することが難しい場合があります。
パッケージング
MP4などの動画ファイルをインターネット上で配信するために適したMPEG-DASHなどの配信プロトコルに変換することです。トランスコーディングや必要に応じてDRMによる暗号化を行うプロセスを含みます。
バッファリング
動画再生前や再生中にプレーヤが常に数秒以上先のストリーミングデータを読み込んでおく技術および、読み込む処理自体のことをいいます。バッファリングを行うことにより、再生開始までのタイムラグは発生しますが、再生中に通信速度が一時的に低下したり瞬断が発生しても途切れることなく再生できる可能性が高くなります。
ビットレート
1秒あたりデータ量を示し、単位はbpsで表現します。動画配信においては数百Kbpsから十数Mbpsの帯域が多く使用されます。同一のコーデックの場合、ビットレートが高い方が画質や音質が向上します。高解像度の動画コンテンツには、必要となるビットレートも高くなります。
フレームレート
動画を連続する静止画であらわしたとき、1秒あたりのフレーム数(静止画の枚数)のことをいいます。フレームレートが高くなるほど、映像が滑らかに見えます。テレビ放送では30fps、映画では24fps、最近のゲーム機などでは60fpsが採用されています。

マルチデバイス
ユーザーの視聴環境は多様化しており、iPhone/AndroidスマートフォンやWindows/Macの各種ブラウザだけでなく、ChromecastやFire TV、Apple TVなどのデバイス、テレビやゲーム機などに至るまで、ストリーミング配信に対応可能なプラットフォームが存在します。動画配信事業者は多くのユーザーの視聴形態を考慮したマルチデバイス対応が必要となります。
見逃し配信
テレビ番組の放送後やライブ配信での配信後に、その番組を視聴しなかった人や視聴できなかった人のために、VODとして配信することをいいます。キャッチアップ配信とも呼びます。

ライセンスサーバー
DRMで暗号化されたコンテンツを再生するためにライセンス発行を行うサーバーです。ライセンスサーバーはプレーヤからのライセンス発行要求を受け、ユーザーが当該コンテンツを再生する権利があることを確認した上で、視聴期限などを適切に設定したライセンスを発行します。
ライブストリーミング
インターネット上でリアルタイムに動画コンテンツの配信を行う方式です。事前に動画コンテンツのデータを準備しておくVOD配信とは異なり、カメラや撮影データからリアルタイムにエンコードとストリーミング形式へのパッケージングを行う必要があるため、ライブエンコーダーや動的パッケージャと呼ばれる専用の機器やソフトウェアが必要になります。MPEG-DASHやHLSといった主要なストリーミング方式はライブストリーミングに対応しています。リアルタイムといっても、エンコードの処理時間やインターネット上でのデータ転送、プレーヤ側でのバッファリングがあるため、一般的には数十秒のタイムラグが発生します。