昨今、動画配信の需要が増えてくるにつれ、不安になってくるのが動画の不正コピー問題です。現在、デファクトスタンダードとなっている不正コピー防止対策としてはDRMが挙げられますが、動画を再生しているモニターをスマートフォンで撮影される場合などは防ぎようがございません。そこで、本記事では近年注目を浴びている「フォレンジック・ウォーターマーク」技術について解説していきます。

フォレンジック・ウォーターマークとは

ウォーターマークと聞くと皆さまは何を思い浮かべますか?おそらく多くの方が、テレビ放送の画面に映り込んでいる局ロゴやチャンネルロゴを思い浮かべるのではないでしょうか。最近では放送のみならず、動画配信でも見かけるようになりました。この様なウォーターマークは著作権保護・著作権表示のために用いられるとされていますが、コンテンツをコピーや流出から守るような機能は特には無いため、著作権表示の目的の方が強いかもしれません。

一方で動画配信で主に使われるウォーターマークは、『Forensic Watermark – フォレンジック・ウォーターマーク』と呼ばれるものです。Forensic とは犯罪捜査における分析、鑑識を意味する語犯罪捜査に資する法的証拠を探し出すことと言う意味なので、フォレンジック・ウォーターマークは配信データが流出した際に、流出元の捜査に用いるためのウォーターマークを意味します。加えて、フォレンジック・ウォーターマークは視聴者には見えない状態で施されているため、動画の視聴の邪魔にはなりません。

このフォレンジック・ウォーターマークは、日本では あまり事例はなく、多くの事例は海外のプレミアムな動画配信コンテンツ向けです。また、この技術は あくまでも流出元の特定に用いられるものであるため、フォレンジック・ウォーターマーク自身にコンテンツのコピーや流出を防ぐ機能はないため、DRMとセットで使用されるのが一般的です。

フォレンジック・ウォーターマークは、流出元の追跡が目的であるため、それ自体を消されないようにするための堅牢性が必要となりますが、ある会社の製品には以下のケースでも対応が可能であるようです。

  • トランスコードや再エンコードをしても消えない
  • 切り抜かれても消えない
  • サイズを変更しても消えない
  • 動画を再生しているモニターをカメラで撮影しても消えない

とても凄い技術ですが、その仕組みは どのようになっているのでしょうか。

フォレンジック・ウォーターマークの仕組み

フォレンジック・ウォーターマークの仕組みを簡単に説明しますと、下図のようになります。

フォレンジック・ウォーターマークの仕組み

こちらは、あくまでもフォレンジック・ウォーターマークを提供している ある会社の仕組みとはなりますが、図にあるように、一つのコンテンツを2つ用意し、それぞれには別々の情報が埋め込まれています。それそれのコンテンツは細切れの状態で視聴者に配信されますが、その際、視聴者ごとに一意となるような組合せで配信されることで、流出したとしても どの視聴者が流出させたのかを特定することが可能です。

では、視聴者ごとに一意となるように配信する仕組みとしては、どのようになっているのか、について次で説明します。

フォレンジック・ウォーターマークが埋め込まれたコンテンツを配信する仕組み

動画配信時にフォレンジック・ウォーターマークを挿入するタイミングとしては大きく分けて、「サーバーサイド」でやるか「クライアントサイド」でやるかという2つとなります。

クライアントサイド

クライアントサイドで挿入する場合、視聴者のセッション情報やID等から一意となるような形でコンテンツを取得します。この場合、処理の複雑さやセキュリティを考慮しますとネイティブアプリケーションで実施する必要があるため、Webブラウザでこの仕組みを利用することはできません。

サーバーサイド

サーバーサイドでも、クライアントサイド同様に視聴者のセッション情報等から一意となるような形でコンテンツを配信します。ただ、一般的には視聴者数の多さからCDNを挟む形となりますので、CDNがフォレンジック・ウォーターマークに対応している必要があります。

さいごに

最後に、フォレンジック・ウォーターマークを提供している会社は、何社かあるため迷われる方も多いかと思いますが、Digital Watermarking Allianceに入っている会社は有名所であるため間違いはないと思います。この中には弊社とお付き合いのある会社もありますので、連絡を頂ければご紹介も可能です。