今ではYoutubeなどのサービスで無料で動画配信を行う事ができますが、動画をダウンロードしたりコピーしたりも簡単にできてしまいます。ただ、著作権等の関係で勝手にコピーされてはならない動画を配信する必要が出てくる場合もあるかもしれません。そんな時は、DRMを使った動画配信を検討してみたほうがよいかもしれません。この記事では、DRM動画配信を行うにあたって必要なシステム構成を簡単にご紹介します。
まず、ストリーミング方式でのDRM動画配信に必要なシステム構成をイメージ化してみます。
いろいろな構成要素がありますね。以下では、それぞれについて簡単に説明をしていきます。
1. コンテンツ管理システム
いわゆるCMS (Content Management System) と呼ばれるものです。[1]
コンテンツの状態を管理し、必要に応じてエンコード・コンテンツの配置・暗号化等を指示します。
無いと動画配信ができないというわけではありませんが、コンテンツの数が大量にある、または、これからどんどん増えていく場合は、人力での管理は大変となります。例えば、保有しているコンテンツの公開・非公開、または公開期限を設定したりサムネイルを設定したり、決めた日程までにエンコード・暗号化を終わらせるためにコンテンツを処理したり…。
沢山の条件を人力で管理するのは無理があるので、システムに管理させる方が圧倒的に楽です。そのためコンテンツ管理システムは重要となってきます。
2. エンコーディングシステム
動画ファイルはそのままの状態ですと、ファイルサイズが大きいなどの理由で配信時に、ずっと読込中の状態となって、ユーザーにとって動画視聴がストレスとなってしまう可能性があります。そのような問題を避けるために、動画の圧縮やユーザーのネットワーク環境に応じて適切なサイズに圧縮してあげるエンコードは重要となってきますが、こちらはそのためのシステムとなります。エンコードの概略については、こちらの記事をご参照ください。
3. パッケージングシステム
ストリーミング方式の場合、動画コンテンツをストリーミング配信可能な形式に変換する必要があります。2018年現在、MPEG-DASHやHLS形式に変換してストリーミング配信を行うのが一般的です。[2]
配信形式についてはこちらの記事もご参照ください。
加えて、秘匿性のある動画を扱っている場合や有料動画配信サービスなどでは、勝手に動画を保存されたり、盗聴などによりコピーされないためにや盗み見されないようにセキュアな動画配信が必要となってきます。そのため、DRM(デジタル著作権管理)によって動画コンテンツを暗号化し、よりセキュアな動画配信を実現します。 (映画やドラマが視聴できる有料動画配信サービスでは、コンテンツプロバイダーからの要求で暗号化しなければならないコンテンツがほとんどです。)
このようなトランスコーディングとDRM暗号化を行うシステムのことを総じてパッケージングシステムと呼びます。
4. 配信オリジンストレージ
パッケージングされた動画コンテンツ置いておくストレージです。
例えばクラウドで有名なところではAmazon S3やMicrosoft Azure Blob Storage等があります。もちろんオンプレミスな環境のストレージに置くこともできますが、動画コンテンツはファイルサイズが大きいため、クラウド上に配置されている場合も多いです。
オンプレミスな環境にファイルを置く場合はストレージに関する継続的なコスト(容量に対する課金・データ転送量に対する課金)はかかりません。ただ、当然ですがハードウェアのメンテナンスコスト等の運用コストはかかります(運用者の人件費も)。障害が起きた場合も自身で対処が必要です。
また、設備のスペックによっては、大量のデータアクセスが来た場合に捌ききれずに配信が止まってしまう可能性もあります。
クラウド環境の場合は上記に書いた通り継続的なコストがかかり続けます。特にデータ転送量が大きくなる動画配信ではかなりお金がかかる傾向にあります。
しかし自前で運用する必要はなく、大抵の場合は冗長化構成が組まれているのでデータ損失の可能性は低くなります。
限度はありますが、大量のデータアクセスにも耐える設計の物が多いため、そちらについても安心はできます。[3]
どちらについてもメリットデメリットがある為、環境に応じて適切なストレージを選択してください。
5. CDN (Content Delivery Network)
動画コンテンツへのアクセスが増えるとオリジンストレージの負荷が高まり、配信が滞ることになります。
その際はCDNを利用し、オリジンストレージの負荷を下げ動画配信をスムーズに行えるように構成します。
有名なところではAkamai、Amazon CloudFront、Azure CDN等、その他さまざまなサービスが存在します。
あまりサービス負荷が高くない場合はCDNを利用する必要がないこともあります。
6. ライセンスサービス
DRMで暗号化されたコンテンツは、それ単体では再生することができません。
再生するためには暗号化を解除する必要があります。暗号化を解除するためのライセンスを発行するのがライセンスサービスです。
主なDRM技術としてMicrosoft PlayReady、Google Widevine, Apple FairPlay Streamingがありますが、それぞれのプラットフォーム向けにライセンスサービスが必要となります。(ライセンスサービスはコンテンツの暗号化を行わない場合は必要ありません)
DRMについては、こちらの記事もご参照ください。
7. クライアント
動画をストリーミング再生するデバイスです。PC、Androidデバイス、iOSデバイス、その他再生環境を指します。それぞれの環境向けにパッケージングされた動画とライセンスサービスにアクセスして動画を再生します。[4]
例えばiOSデバイスの場合はHLSでパッケージングしてApple FairPlay Streamingで暗号化・暗号解除、Androidデバイスの場合はMPEG-DASHでパッケージングしてWidevineで暗号化・暗号解除といったように、再生環境に応じた種類の配信形式を用意する必要があるということです。
終わりに
動画配信の裏側がどのような物が動いていて何が必要か、ご理解していただけましたでしょうか。
ネクストスケープのMulti DRM Kitでは動画配信の核となるエンコーディング・暗号化を含むパッケージング・ライセンスをサポートしております。
ご興味があればお問い合わせいただければと思います。