2020年、AdobeのFlashサポート終了に伴い、主要各ブラウザでのFlashアプリケーションが無効化されていきます。その流れもあり、Flash Playerで動画配信をされていた方の多くは、HTML5プレイヤーへの移行を検討されていることと思います。

ただ、動画コンテンツを暗号化配信されている方々は、HTML5プレイヤーへの移行後、 どういった暗号化配信手段があるかのかが分からないと、お悩みの方も多いと思います。この記事では、そういった方々に2つの方法を、簡単に ご紹介していきます。

HLS暗号化配信(HLS+AES)

HTML5プレイヤーへの移行後、暗号化配信方法の選択の一つとして、HLS暗号化配信(HLS+AES) が挙げられます。詳細については、こちらで記事にしておりますので参照いただければと思いますが、簡易的な暗号化配信方式として、よく採用されています。

ただし、前掲の記事にもありますように、HLS暗号化配信では、暗号化キーを簡単に取得することができてしまい、動画は簡単に復号できてしまいます。これまでFlash動画コンテンツを暗号化配信されていた方々は、Adobe Media Server(旧、Flash Media Server)を使用されていたかと思いますが、Adobe Media Serverの場合、鍵情報は簡単に取得できないような機能があり、HLS暗号化配信よりはセキュアな配信と言えます。

では、「鍵自体をさらに暗号化、あるいは、難読化してしまえばよいのではないか?」と思われる方もいらっしゃると思います。
しかし、HLS暗号化配信の場合は、鍵を暗号化、または、難読化していたとしても、複合処理はクライアント側で行われることになります。そして、その処理はJavaScriptとなるため、ユーザがどういった処理がなされているのかを覗けてしまいます。対してAdobe Media Serverの場合は、クライアント側の処理を簡単に覗けないようになっています。

このため、FlashプレイヤーからHTML5プレイヤーへ移行された場合、コンテンツが簡単にコピーされないようにしたいならば、HLS暗号化配信では、不十分ということになります。

DRM(Digital Rights Management)配信

ブラウザ上でのセキュアな動画配信をする場合のデファクトスタンダードはDRM(Digital Rights Management)を利用することです。 DRMはハリウッドなどの大手スタジオでも採用されているセキュアな配信方法となっており、たとえ通信を覗かれたとしても暗号化キーが取得することは困難であり、クライアント側での複合処理もユーザは覗けないようになっています。

また、DRMでは単に暗号化配信する以外にも、動画再生時間の制御や再生環境の制御等、様々な機能があるため、よりセキュアな動画配信を実現したい場合には有力な手法の一つとなります。[1]

ただ、難点としては、利用するまでのハードルが高いことが挙げられます。

一つは、採用しなければならないDRM技術が、対象のデバイスによって異なるという点で、世の中に一般的に出回っているデバイスすべてに対応したい場合は、3つのDRM技術(Microsoft PlayReady、Google Widevine、Apple FairPlay Streaming)に対応する必要があります。[2]

二つ目は、DRM対応する場合、DRM提供会社とのライセンス契約が必要であったり、有料の研修を受講する必要があったりと会社によって求められる要件は異なります。

さらに、技術面(開発面)でもハードルが高いところがあり、また、運用面でもライセンシーの義務があったりと、自前でやる場合は、導入・運用にかなりのコストがかかってくることとなります。

最後に

インターネットでのセキュアな動画配信をする方法として、2つの方法を挙げました。どちらを採用されるかは、皆様がどういったレベルのセキュリティを求めているかによります。

利用者が制限されていて、動画を不正にコピーされたとしても、そこまで問題ではないという場合は、HLS暗号化配信でよいと思います。しかし、不正コピーされてしまってはビジネスチャンスが失われるなどの懸念がある場合はDRM配信をされるほうがよいと思います。

ただ、前述しましたようにDRM配信をするには、いくつかのハードルを超えなければなりません。特に自前でDRM動画配信をやられる場合、前述したように、各DRM提供企業との契約や研修参加等でかなりのコストがかかります。また、実際の導入部分においても、開発等でいろいろな不安もあるかと思います。

弊社ではDRM導入にあたってのハードルを下げるために、『Multi DRM Kit』を提供しております。上記で挙げた様々な契約等の手続きを簡略化するだけでなく、豊富なサンプルの提供やコンサルティングも承りますので、DRM導入をお考えの方はぜひご検討いただければと思います。



  1. DRMが単に「暗号化配信」ではないといわれる所以です。[]
  2. クライアント環境によって使用するDRMについては、こちらの記事の「どんなDRMを選べばいいの?」を参照ください。[]